湯ノ湖 |
前の晩、思いつきで宿を取り、車で出かけたはいいが、日光に入った途端、雪がちらつき始めた。
タイヤをスタッドレスに変えていなかったけれど、今更引き返すわけにも行かず、宿に向かった。
明日、もし積もってしまったらどうしよう。帰るに帰れない。
困ったなあ、どうしたらいいのだろう?と散々悩んだが、
そんな思いも、温泉に入るうち、しだいに消えて行った。
積もってしまえばもう一泊すればいいだけじゃないか、
そんな風にポジティブに考えられるようになるぐらい、
雪の降る中入る露天風呂は気持ちよかったのだ。
当時、まだ女湯に入れるくらい幼い息子(今はもう恥ずかしくて無理らしい)は、
傍らでお湯につかったり出たりしながら小さな雪だるまを作っている。
見上げれば真っ黒い空から、白いものがたくさん降り注いでくる。
体はじんわりあたたかく、顔は夜風に吹かれて心地よい。
なんて幸せなんだろう。そう心から思えたのは久しぶりのことだった。
お風呂に入って再び幸せをかみしめたのは、その1年後、3.11の直後のことだ。
ガスも水道も使えなくなってのち、被災地から遠く離れた実家に身を寄せた。
そのとき入れてもらったお風呂のありがたかったことといったら。
ただ普通にお風呂に入るだけのことが、こんなにも幸せなことだとは思わなかった。
でも、自分だけ逃げてきて、こうして暖かいお湯の中に包まれていることに、
申し訳ないような後ろめたいような気持ちになって、泣いてしまった。
あれからもう四年経つけれど、復興はなかなか進まないと聞く。
たくさんの人が、たくさんのものを失った、悲しい日。
その日が来る度、みんなが毎日温かなお風呂に入れていたらいいなと願う。
ほんの少しでも冷たい心を溶かしてくれると思うから。
雪の日の露天風呂みたいに。
以下、日光の写真をいくつか。これは丁度昨年の今頃のもの。
稲荷川 |
日光東照宮 |
竜頭の滝 |
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